デザイン事務所で働く人たち。福岡オフィス図鑑 FUKUOKA OFFICE GUIDE

福岡オフィス図鑑05
株式会社フェヴリナ

第5回目となる今回の取材先は、天神から薬院へと拠点を移した株式会社フェヴリナ。
通信販売を軸とした化粧品販売を行う同社では一体どのような視点で新オフィスを構想し、そして実現したのか。
移転して間もない新オフィスへ向かい、お話を伺ってきました。

富士通コミュニケーションサービス株式会社北九州黒崎サポートセンターオフィス

アイデンティティを表現する

 いまから遡ること15年前に高架化が行われ、特急電車・急行電車が停車するようになった薬院駅は、新たなビジネス地区として今も変化を続けている。株式会社フェヴリナは2010年2月中旬に薬院駅近く薬院ビジネスガーデンの8階へ拠点を移したばかりの、化粧品を中心とした通信販売を行う会社。本社の扉を開くと、同社のロゴとコーポレートアイデンティティー「FAVORINA CREDO」のプレートが目をひく、どこか温もりを感じるLEDが照らすエントランスが現れる。


 「ON/OFFが明確なオフィスを創りたかった」と語るのは代表取締役の遠藤英樹氏。一見、当たり前に感じるコンセプトだが、根幹にはさらなる思いが込められている。そのキーワードは、ずばり「自然」。1つ目の自然は、コールセンターに入るとすぐに体感できる。三方をガラスで囲まれた空間にはいつの時間も自然光が入る設計。柱やパーテーションも最小限の配置にとどまり、どこの席にいても自然光が感じられるオフィスレイアウト。さらに壁面の一部には生の植物が埋め込まれており8階でも自然の息吹を身近に感じることができる。

スイッチを切り替える工夫

 2つ目は、”自然な”心理の切り替え。社員は出勤すると必ず「リフレッシュルーム」を通過する構造になっている。「社長、ココに住んでいいですか?」とスタッフに言わしめるほどだ。このスペースの一角には畳が置かれ、8階という景観を十分に堪能できる開放的なレイアウト。その後、併設された更衣室で着替えワークスペースへ向かう。社員はこの一連の移動で遠藤社長の言う「ON/OFFが明確なオフィス」を無意識のうちに感じることになる。さらにワークスペースへ入ると最初に、壁面にある自分のプレートを反転させる。通常は名前が記載されているプレートを連想するが、同社のプレートは自分の満面の笑みがプリントされている。「自分の笑顔を見て、自分が笑う。その笑顔がお客様に伝わると、そのお客様はきっと担当したカスタマーフレンドの、商品の、会社のファンになっていただける。このアナログ的なプレートシステムは凄く気に入っています」と遠藤社長は語る。


オフィスの変化とワーカーの変化

 遠藤社長の目指すオフィスは既にスタッフにも変化をもたらしている。「以前はゴミ箱には業務にあまり関連しないものが多く捨てられていました。今はそういったことがほとんど無く、ゴミ箱の設置数自体も減らしています。しかも、そのことはトップダウンでなくスタッフが話し合って決定したことなのです」この自発的な姿勢こそが3つ目の「自然」。「自らが仕事に没頭できる環境を提案する」ことが自然にできるスタッフが現れ始め、スタッフ全員が「自発的な姿勢が求められていること」を感じ取っている最中のようだ。
 とある朝、いつもより早く出社した社員にその理由を尋ねると「会社に行きたくなったんです」と答えたという。通信販売という顧客の顔が見えにくい業態だからこそ、顧客へ伝わるモノの重要性を認識している。その為にはまず、顧客との窓口であるカスタマーフレンド一人ひとりの心がポジティブに向かうような雰囲気にしたかったと遠藤社長は語る。「まだまだスタートしたばかり。確かにオフィスを変えた勢いは感じますけど」と謙遜する遠藤社長だが、その目は起こりはじめた『化学反応』の今後に自信を持っているように見えた。

writing:松元拓 / photo : 松島晋也


株式会社フェヴリナ  http://www.favorina.com

本社:〒810-0022 福岡県福岡市中央区薬院1-1-1 薬院ビジネスガーデン8F
TEL. 092-720-5420 / FAX. 092-720-5421
●代表:遠藤 英樹 ●設立:2003年12月5日 ●資本金:8億8278万円(2009年3月31日現在)
●事業内容:化粧品を中心とした通信販売 ●上場日:2003年12月5日(東証マザーズ)
■ プロジェクト管理:株式会社オフィス企画 ■ 設計・デザイン:株式会社アドアルファ