デザイン事務所で働く人たち。福岡オフィス図鑑 FUKUOKA OFFICE GUIDE

福岡オフィス図鑑02
ニライ法律事務所

 ニライ法律事務所は、弁護士3名が所属。主に一般民事・刑事・中小企業法務を中心に扱う法律事務所。
ニライ法律事務所の「ニライ」は、沖縄の伝承である「ニライカナイ」に由来している。
「ニライカナイ」とは、沖縄の東の海の彼方にあるとされる理想郷・神界であり、魂が来て、帰る場所。
祖先の霊は「ニライカナイ」において守護神となり、「ニライカナイ」よりやってきて、人々に恵みをもたらすとされている。
地元の困っている人達の助けとなる理想の事務所を作りたい、という思いから「ニライ法律事務所」が誕生した。

ニライ法律事務所オフィス

レンガの壁がある法律事務所

 弁護士事務所と聞いて、まずはじめに何を想像するだろうか。天井高く積み上げられた判例資料の山?それとも高級感たっぷりの応接室?沖縄の東の海の彼方にあるとされる理想郷「ニライカナイ」を由来とする「ニライ法律事務所」は、そんな既成の法律事務所のイメージを払拭させるオフィスだ。所属弁護士の仲西弁護士は、「私達は、仕事場を単に作業できる場所とは捉えていません。目に見える機能性だけでなく、家や車、趣味の物に凝ったりするのと同じように、自分達の居場所としてオフィスにもこだわりを持っていたいと考えています。」その言葉の通り、オフィス内の随所にそのこだわりが窺える。エントランスにはシャンデリアがかかり、相談室まで続くレンガの壁に目を奪われる。相談室は、執務室から完全に区切られた防音のスペースでありながら、大きな窓と随所に配置された観葉植物が空間に開放感を与えている。また、ニライ法律事務所の相談室には電話機を設置していない。事務的なイメージを排除し、何よりも依頼主との信頼関係を重んじる仲西弁護士の意向からだ。さらに相談室へは、靴を脱いで入室する形を取っている。「私達にとっても依頼主の方にとってもリラックスしてお話でき、大変良い効果を生んでいると思います。」また普段使っているボールペンは琉球松を素材としたものだったり、お茶を出すカップはコーポレートカラーである赤色の琉球ガラスだったりと、事務所と言うよりも、リラックスできるお気に入りのカフェに来たという感じかもしれない。法律事務所に求められるクローズな空間を基本としながらも、オープンなおもてなしでお迎えする。そんな仲西弁護士や古賀弁護士の細やかな心配りが感じられる、今までにあるようでなかったオフィスではないだろうか。

集中と交流を同じ場所で

 いくつもの案件を抱え、個人で集中して作業を行なうことの多い弁護士と言う職業。そんな多忙な日常の中、社内でのコミュニケーションはどのように行なわれているのだろうか。「一週間に一度、短時間のミーティングの時間があり、弁護士と事務員とで事務所の改善点や購入が必要なものなどについて話し合う時間を設けています。執務室では個々人が集中できる環境と、話し合いが簡単に出来る環境の両立が重要だと思います。パーティションで空間を仕切ることも一つの手段としては有効かもしれませんが、同じ列に並ぶことによって得られる一体感やコミュニケーションのしやすさを優先し、パーティションは設置していません。」事務所内のデスクは、仲西弁護士のデスクを除いて、すべて外側を向いている。机の上には本棚を設け、作業をしながら参考文献や判例資料、依頼者のファイルをすぐに手に取れるようにしてある。そしてワークスペースの中央には、将来的にミーティングとリフレッシュを両立できる卓球台を設置する予定だそうだ。

ホームレス弁護士

 東京で以前所属していた事務所が移転をする際、一週間ほどオフィスを持たないホームレス弁護士になったという変わった経験をされている仲西弁護士。そんな仲西弁護士に大胆な質問を投げかけた。「オフィスって本当に必要ですか?」と。「僕らの仕事は、記録さえあれば基本的に家でも出来る仕事です。電話は転送すれば良いですし、FAXも外で受け取れます。もちろん送信も。人とお会いするのも必ずしも事務所で無ければならないということはありません。調べ物もインターネットに繋がる環境があれば判例データベースが使えます。本が読みたいなら図書館に行けばよいですしね。以前東京で働いていたときに、一週間ホームレス弁護士になったことがあるのですが、キャリーバッグに記録を入れ、携帯電話で依頼者や裁判所とやり取りをし、人と会うのは喫茶店、ノートPCを持ち歩いて弁護士会や公園で書面を書いたりしていました。オフィスが無くてもやっていけない仕事ではないです。」確かにそうかもしれない。インターネットや携帯電話を用いた仕事をしている中で、そして日々流動的に動いている社会の中で、「働き方」は、オフィスが無くても自分でつくり出せる時代に来ているのかもしれない。しかしながら仲西弁護士は続けてこう付け加えた。「でも集中して作業をしたり、仕事へのモチベーションを高めたり、他の従業員やスタッフと簡単に会話が出来たり、依頼主に安心してご相談していただける、といったメリットは簡単に放棄出来ません。そういった意味でオフィスは不可欠だと思っています。」パートナーの古賀弁護士も「オフィスのない弁護士事務所に依頼して数十万円の着手金を預ける気にはなれないのではないかと感じています。もちろん複数の人と連携して行なう業務もありますので、オフィスは重要な場所です。」お二人とも、オフィスを単なる労働の場所としてではなく、コミュニケーションや信頼を築く場所として捉えているということなのだろう。

他業種との提携や、東京への出店もしたい

 オフィスや働き方へのこだわりを感じる「ニライ法律事務所」。最後にこれからの展望を伺った。「事務所を極端に大きくしようとは思っていません。それよりも小さな事務所をたくさん繋いで取り扱い事件や書面のデータベースを作れるといいですね。守秘義務の問題もあるので難しいとは思いますが、様々な条件や規約をつくれば、絶対無理!という話ではないと思っています。」また、建築士や医者と複数提携して、建築紛争や医療過誤で迅速に対応できる体制もとりたいと考える仲西弁護士。将来に向けての働き方ビジョンも明確にお聞きすることが出来た。さらに古賀弁護士は、「東京に支店を出したいと思ったりします。今の事務所を増員するとしたら、自分の執務スペースを作ってなおかつコミュニケーションの円滑性も損なわない、そして電話の声が聞こえないような空間にしたいです。」とこれから取り組みたい空間構成についても伺うことが出来た。自由な発想と新しい視点で「働き方」を捉えるニライ法律事務所。これからも理想の事務所を築いていくと共に今後の活動にも注目していきたい。

writing:石畠啓行 / photo : PHOTO OFFICE f64

ニライ法律事務所
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